目次
1.障害年金をもらいながら働けるのか?
最近、60歳を過ぎた夫があちこちガタがきているので、もし夫が万が一働けなくなったら
どうしようと考えることが多くなってきました。
私たちが「年金」というと、65歳からもらえる「厚生年金」や「国民年金」など
老後の生活費と考えて使っていますよね。
しかし、正式には「厚生年金保険」「国民年金保険」で「保険」なんです。
家庭では、夫が亡くなった時の生活費や家族が病気なった時の備えに
民間の「生命保険」や「医療保険」に加入しまよね。
おおざっぱにいうと「厚生年金保険」も「国民年金保険」も国がやっている
「保険」に国民が加入しているとということなんです。
「保険」なので、将来の生活費や病気やケガに対して、保険料を分担しあっていく
相互扶助の制度なので老後の生活費以外に使える年金があるんです。
年金を分けると3つで、ざっくりとした内容は以下のとおり。
老齢年金→年を取って働けなくなった時の給付
遺族年金→生活費を稼いでいる人が亡くなって残された家族への給付
障害年金→病気やケガで障害の状態で労働や日常生活において困難な人に対しての給付
老齢年金と遺族年金は、知っているけれど障害年金のことは
よくわからない人も多いのではないでしょうか。
私も、障害年金は重度の障害じゃなくちゃもらえない?システムが複雑で
なかなかもらえないと耳にしたことがあります。
本当にそうなのでしょうか?
2.障害年金とは
1.障害年金とは
「障害の状態」を理由とした年金であって、現役世代で障害状態になり
労働や日常生活における困難に対しての給付です。
そのため原則として既に「老齢」を理由に年金を受けられる65歳以上の方は
請求できません。(一部、65歳を超えても請求できる場合があります)
障害の支給のある状態になった場合に支給される年金なのです。
2.受給要件
障害年金をもらうには、3つの要件が必要です。
1.初診日
2.保険料納付
3.障害認定日において障害の状態に該当しているかどうか
3.障害の程度と区分
【障害基礎年金(国民年金」)】
1級と2級の2区分
1級→他人の介助が必要で自分ではほとんどできない状態
2級→他人の助けが借りる程度ではない
【障害厚生年金(厚生年金)】
1級~3級の3区分
1級→他人の介助が必要で自分ではほとんどできない状態
2級→他人の助けが借りる程度ではない
3級→傷病が治っておらず労働に制限がある
【障害手当金(厚生年金)】
区分無し
初診日から5年以内に治っていて
障害厚生年金の3級よりも程度が軽い障害が残っている。
4.支給対象となる傷病
障害年金をもらうには、障害の状態となっている病気やケガが
その対象になっていることが要件になっていますが、数が多いです。
日本年金機構に支給対象の傷病の一覧が載っていますので、確認してみてください。
日本年金機構
人工透析や精神疾患や悪性腫瘍(ガン)など広範囲が支給対象になっているので、
見逃している人も多いのではないでしょうか。
5.年金額
障害年金っていくらもらえるのは気になるところですよね。
障害基礎年金は、もらえる金額が決まっていますが、障害厚生年金は、報酬比例の年金額に
配偶者の加給年金額などで決まります。
【障害基礎年金】
【1級】 779,300円×1.25+子の加算
【2級】 779,300円+子の加算
子の加算
- 第1子・第2子 各 224,300円
- 第3子以降 各 74,800円
子とは次の者に限る
- 18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
- 20歳未満で障害等級1級または2級の障害者
【障害厚生年金】
【1級】
(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,300円)〕
【2級】
(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(224,300円)〕※
【3級】
(報酬比例の年金額) ※最低保障額 584,500円
※対象者のみ
(報酬比例の年金額)は
障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法
3.障害年金をもらって働くことができるのか?
障害年金では、働くことを禁止していないので、障害年金をもらいながら働いている人が
いるんですね。
そこで、
厚生労働省の年金制度基礎調査(障害年金受給実態調査 平成26年)のデータによると
松山純子著「これならわかる障害年金」をもとにみてみます。
1.就業率
厚生労働省の年金制度基礎調査(障害年金受給実態調査 平成26年)のデータでは障害年金を
受給している人全体の27.6%が仕事についています.
障害厚生年金・障害基礎年金ともに障害の程度が軽くなるにつれて、就業率が高くなる
傾向があるかもしれません。
障害厚生年金では、30歳~60歳までの約40%前後が仕事についています。
障害厚生年金をもらう人は、会社員が多いことから、障害をおっても働き続ける
環境があることと、家族を養う年代であることから就業率アップにつながっているのでしょう。
2.仕事の内容
では、どんな仕事についているのでしょうか。
【全体】
障害厚生年金をもらっている人は、「常勤の会社員・公務員等」が多く、
障害基礎年金をもらっている人は、「障害福祉サービス事業所等」が多くなっています。
※障害福祉サービスは、障碍者の自立支援法のサービス。介護や自立訓練など就労支援を含む。
【男性】
男性の場合は、障害厚生年金をもらっている人は、「常勤の会社員・公務員等」が多く、
反対に、障害基礎年金をもらっている人は、「障害福祉サービス事業所等」が多くなっています。
【女性】
女性の場合は、障害厚生年金をもらっている人は、「臨時・パート等」が多く
障害基礎年金をもらっている人は、「障害福祉サービス事業所等」が多くなっています。
3.1週間あたりの就業時間
では、1週間あたり何時間ぐらい働いているのでしょうか。
【男性】
障害厚生年金、障害基礎年金とも、1級は、0~10時間が多く、
障害厚生年金は2級は30時間、3級は40時間~です。
障害基礎年金1級は0~10時間2級が20時間~30時間となっています。
障害の程度が軽いほど就労時間が多くいですね。
【女性】
障害厚生年金、障害基礎年金とも0~10時間となっています。
4.本人の仕事による収入
仕事による年収はどうなっているのでしょう。
障害厚生年金・障害基礎年金とも、1級~3級まで、50万円で、次が50万~100万円です。
障害年金とは別に、労働収入があると心にゆとりが出てきますよね。
たとえば、月に18万円の生活費がかかる人に
障害基礎年金2級で約6万5000円の収入があれば、働いて得るお金は11万5000円です。
5.世帯収入
障害年金をもらっている人の世帯収入は(夫が障害年金をもらっていて妻が働いている場合など)
いくらぐらいでしょうか。
右端の中央値の数字を見てみると、障害厚生年金は障害の重い1級が世帯収入が多く
障害基礎年金の場合は、障害の軽い2級の方が世帯収入が多くなっています。
6.1か月あたりの生活費
1か月あたりの生活費はいくらになっているのでしょう。
障害厚生年金の場合1級は15万円~20万円で、2級3級は10万円~15万円
障害基礎年金は、5万円~10万円となっています。
7.働くことは、年金をもらうことの妨げにならない
老齢年金のように、障害年金は原則として働いていることを理由にもらえる金額が減らされたり
もらえなくなったりすることはありません。(支給調整あり→20歳前障害基礎年金など)
障害年金の支給条件に「労働が著しい制限を受けるかまたは労働に著しい制限を加えることを
必要とする」という文言が含まれているからです。
それなら、ほとんど働けないんじゃないかと思いますよね。
でも、そこは杓子定規なキッチリした判断ではないようです。
◆傷病の原因、諸症状
◆治療や病状の経過
◆具体的な日生活状況
など総合的に判断されるので、障害の状態が健康な人と同じように働くことができないけれど
軽度の作業とか、1日の労働時間が少ない等の状況であれば、障害年金をもらいながら
働けるということです。
心臓ペースメーカーを装着している年収2000万円の会社員でも受給できます。
障害厚生年金の3級の場合は、「傷病が治っておらず労働に制限がある」とあるので
会社員の場合なら3級に該当していないか?調べてみると該当してるかもしれません。
4.まとめ
障害年金をもらいながら働けるのは心強いですよね。
障害年金は、一生働けない障害をおっていて、働けない人がもらう年金というイメージでした。
しかし、データから見えてくることは、生活していくには少ない額であっても
日々一生懸命働いている人がいること。
そして、障害があっても、少しでも社会とのつながりを持とうと頑張っている姿が
見えてきました。
誰でも明日のことはわかりませんよね。
いつ自動車事故や難病で障害年金のお世話になるかわからないのです。
その時「もうだめだ働けない」と悲しむ前に「働く方法はないだろうか?」と
前向きに考えることで、道が開けるかもしれませんね。
長くなりましたが、まだまだ障害年金についてわからないよ!(笑)という人は
以下のサイトが参考になるでしょう。
1.【年金機構の手話・字幕付き動画(2)障害年金について】
パンフレット「障害年金ガイド」平成28年度版
2.【youtube 障害年金ガイド(平成28年度版)】
3.【松山純子著「これならわかる障害年金」】
障害年金とは~障害年金の手続き~受給まで図解や表を使ってわかりやすいのでオススメです。