藤田孝典著「続・下流老人」なぜ高齢者は働くのか?

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1.はじめに

著者の藤田孝典氏の活動を知ったのは、以前NHKEテレの生活保護関連の番組でした。

番組では埼玉県さいたま市でNPO法人「ほっとプラス」を運営し、ホームレス状態の人を支援する

活動を紹介。

 

最近では、メディアにも多数出演し、「下流老人 一億総老後崩壊の衝撃」で

「下流老人」という言葉を世に出したことで有名になった人でもあります。

書店の平積みで目にしたので、手に取り読んでみることにした。

 

2.藤田孝典著「続・下流老人」の内容を簡単に

ソーシャルワーカーとして、生活困窮者に耳を傾け日々奮闘されている藤田氏が

実例をもとに、高齢者のリアルな声と日本の高齢者がどうしてこれほど

働かなければならないのかを客観的データで検証しています。

 

3.第3章誰もが陥る「死ぬまで働く」という生き方

この本の中で私が特に印象に残ったのがこの第3章 誰もが陥る「死ぬまで働く」

という生き方の章です。

 

この章では、なぜ高齢者は働かなければならないのか?

日本の高齢者はどんな生活を送っているのか?

 

働く高齢者が増えていることもテレビその他のメディアで目にすること

があります。

 

しかし、そこにいる人は特別な事情がある、ごく一部の人という印象を

私は持っていました。

 

実際のところ、老後の生活で手本となる両親や親戚の叔父や叔母たちは

贅沢さえしなければ年金と貯蓄で働かなくても、暮らしているのを見ていたから

でしょう。

 

この本を読んで、高齢者が働き続けなければならないのは、一部の富裕層を除いて

誰にでも起こりうることだということを気づかされてくれました。

 

1.高齢者が働く理由とは

 

厚生労働省「平成28年版高齢社会白書」から引用

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上の図を見ると、平成15年の65歳以上で働いている人は218万人だったのに対して

平成27年では458万人。

 

2倍にもなっていて、65歳以下の人口よりも増えています。

さらに、65歳以上の人の中で、働いている人の割合も9.0%から13.5%にも

なっています。

 

高齢者の人口が増えているにしても、65歳以上で働いてる割合が

10年で4.5%も増えています。

 

高齢者の就業状況

総務省「就業構造基本調査」から引用

2016y12m23d_045521189

65歳から年齢が上がるにほどに非就業希望者が増えていき、女性の場合70%以上が

非就労希望者になっています。

75歳以上になっても非正規で働いているのは、生活費を稼ぐためでしょう。

高齢者の州ふぉう希望年齢

内閣府「高齢者の日常生活に関する意識調査」から引用

2016y12m23d_045734071

60歳の定年退職後、年金が満額支給される65歳まで継続して雇用されるので

65歳くらいまでの終了希望あるのは理解できます。

 

しかし、70歳くらい~働けるうちはいつまでもを合わせると

55.3%にものぼっています。

 

この数字から、余生の趣味やおこづかいのために働くといった意味合いをこえて

生活のために働けるうちはいつまでも働かなければならないからではないでしょうか。

 

では、高齢者はなぜ働き続けるのか?

著書ではセカンドラフを満喫している生活にゆとりのある人ではない

多くの高齢者にとって、高齢期の労働の目的は「金」だ。

退職後の仕事は、生きがいづくりの場などではなく

これまでの現役生活との地続きの、シビアな現場なのである。

高齢者の就労を希望する理由の国際比較では

日本の高齢者は「収入が欲しいから」が49%であったのに対して

ドイツやスウェーデンは「仕事そのものが面白いから、自分の活力なるから」が

働く一番の理由にあげている。

 

今の日本では、消費税が8%に上がっても、介護保険料を払っても私たちの老後は

安泰ではない。

 

老後の生活費として年金が頼りなのに減らされて、介護保険料や医療費が

上がっていくばかりではいつまでたっても、余生はこないのです。

 

高齢者が働く理由は3つ

 1.下がり続ける年金受給額

 2.上がり続ける介護保険料

 3上がり続ける生活費

 

何よりも強調したいのは

「保険料や税を多く支払った分だけ、生活が改善された」という

”受益感”がないことだ。

 

高齢者にも手厚い社会保障制度があるフランスやスェーデンは消費税が高くても

老後の生活に安心感をもてるのなら納得できるでしょう。

 

しかし、今の日本では政治家の不正が問題になっている間は、安心して老後を送れる

社会保障制度を作ることは財政の面でも難しいです。

 

2.死ぬまで働く高齢者を生み出す背景

個人の意思とは関係なく降りかかってくる困難があっても

社会保障のバックアップが期待できないから、働き続けなければならないことも

指摘してます。

 

例えば、リストラにあってコンビニのアルバイトでしか生計を立てられない男性は

将来受け取る年金が少なくなる。

 

遠くに住む親の介護のために離職したため、再び正社員に戻れない。

年金生活に入ってから、子どもが心病気で自立できないから

子どもの生活まで老親が面倒をみる。など

 

誰にでも起こりうる困難をサポートする社会保障制度の不備についても触れています。

私も遠く離れて暮らす両親の介護や娘たちが病気になった時のことを思うと

改めて考えさせられました。

 

3.まとめ

「続・下流老人」全233ページのごく一部をご紹介しました。

他にも下流老人の今の現状や格差社会がもたらす課題から

著者が考える解決策まで綴られています。

 

また、わかりやすい言葉と図やグラフなどを使っているので

いっきに読み進めることができます。

今の高齢者が置かれている状況に関心がおありなら一読をお勧めします。