目次
1.なぜ高齢の親が何を食べているかを知ったほうがよいのか?
高齢になると「食欲がない」「お腹がすかない」「調理するのが面倒」などの理由で栄養不足になり、放置すると体重や体力が減少し要介護状態へとすすむといわれています。
要介護状態へ進む手前の状態を「フレイル」といいます。特に70代以上の女性にその傾向があり、厚生労働省では、高齢者やその家族がフレイル予防に役立てることを目的にパンフレットを作成しています。
では、このフレイルを予防するにはどうしたらいいのでしょうか?
大きく3つあって「栄養」「身体活動」「社会参加」です。なかでも「栄養」は活力の基本となるので重要になってきます。
フレイルなのかを判断するには以下の3つをあてはめてみます。
■疲れやすく何をするのも面倒だ
■体重が以前よりも減ってきた
親にこのような様子が見られるとフレイルの状態になっているかもしれません。
2.フレイル予防のための食事とは
フレイル予防のためには栄養のある食事を毎日3食とることが大切です。
高齢者の食事で不足しがちなのがたんぱく質。1品プラスするだけでたんぱく質の量がアップ!
ここまで厚生労働省発行の「食べて元気にフレイル予防」のイラストを見てきました。
私たちでさえ3食作るのは面倒なのに、高齢の親が1日3食きっちり作って食べているのでしょうか?そんな疑問から私は両親が実際にどんな食材を使って何を食べているのかを調べてみることにしました。
画像引用:厚生労働省「食べて元気にフレイル予防」
3.親の食事を見てわかったこと
親の普段の食生活は離れて暮らす子どもにとって意外とわからないものです。
そこで私は実家に帰省したときに、普段両親はどのような食事をしているのか?写真を撮ってみることにしました。
父:89歳・・・入れ歯なし
母:85歳・・・一部入れ歯
■両親ともに食事制限を必要とする内臓疾患なし。
【朝食(6日間分)】
朝食は昨晩の残り物があるものの、意外にも野菜を使ったメニューが並びました。また、納豆やキムチといった発酵食品を意識的に食べているようです。
【夕食(6日間分)】
夕食は、主菜が魚中心で肉は鶏肉の肉団子とかぼちゃのそぼろ煮で利用。副菜では根菜や青菜は火を通しやわらかく煮たメニューを食べていました。
朝食と夕食それぞれ6日間の食事を見てみると、野菜とお魚を中心とした食事を摂っているいることがわかりましたが、一方で気になることがありました。
この2つの問題を解決するためにいくつかの提案をしてみることにしました。
1.3食のうち昼食はパンか麺類
帰省中の昼食は、麺類かパンと紅茶にサラダ。買い物に行ったついでにお弁当を買って食べていました。
母にお昼ごはんを作らない理由を聞くと「作るのが億劫でお昼ごはんくらいは作りたくない」とのこと。85歳の母にとって重いなべを使っての調理や食器洗い、残った食材の保存など、ごはんを作るのは重労働のなのかもしれません。
そこで、母は生協の宅配を利用しているので「冷凍のミールキット」を提案してみました。
「ミールキット」は野菜の洗浄やカット済みでたれとレシピ付きのお料理セットになっているので時短にもなるし、鍋を用意するだけなので洗い物も少なくてすみます。
2.乳製品、肉類が少ない
食後にくだものにヨーグルトをかけて食べているけどその量が少なく、肉類は鶏ひき肉以外牛・豚肉はほとんど食べていません。
乳製品や肉類が少ない理由を聞くと「グラタンやシチューくらいしかメニューを知らないから」「豚肉や牛肉は脂っこいし、火を通すと固くなるので食べにくい」とのこと。
トーストにスライスチーズをのせて焼いたり、ゆでた野菜のチーズ焼き、電子レンジで作るリゾットで乳製品が摂れること。豚肉はフードプロセッサーでミンチにすると食べやすいことをアドバイスしました。
私たちはネットでレシピを検索できますが、高齢者はテレビ、新聞、本、雑誌でしか情報を得られません。
親世代は、工程数の多い昔のままのレシピで作っていることがあるので、電子レンジを使った時短レシピを教えてあげると喜ばれるでしょう。
4.調理の悩みを聞いて解決策を教えてあげる
母が昼食を作りたくないもう一つの理由は、調理器具が重く、洗い物が面倒なことです。
高齢になると腕や手首の力が弱くなって,調理器具が重くて扱いずらいのです。
昔の母は,圧力なべをよく使って筑前煮や昆布巻きを作っていましたが、今ではなべは重くて持てないし洗うのが一苦労。フライパンも同じく重いうえにちょっとしたことで火傷を負うことがあったので使いたくないのでしょう。
解決策としてすすめたのは、具材を切って袋に入れてチンするだけの電子レンジ用圧力調理バッグ。
調理器具を使わないので手軽に作れて栄養をのがさないがメリット。レシピはネット検索してプリントアウトしてあげると喜ばれでしょう。
5.宅配サービスやコンビニの利用をすすめる
1.食事の宅配サービス
最近では、自治体で高齢者向けの食事の宅配サービスをおこなっているところがあり、1食500円前後で出来立てのごはんとおかずを自宅まで届けてくれるので利用者が増えているようです。
ネットで調べたところ両親が住んでいる自治体でも同じサービスがあることを知り、さっそく申し込んでみることにしました。
1食を安価でサービスを受けられるのは、年金生活の高齢者にとって利用価値は大いにありますから、自治体に問い合わせてみるとよいでしょう。
2.生協の注文内容をチェックする
生協の宅配を利用している高齢者は多いのではないでしょうか。
母も毎週生協の宅配を利用していますが、注文する商品は毎回ほぼ同じような食材ばかり。
母が利用している生協のチラシをのぞいてみると、調理済みの食材や簡単に食べられる冷凍食品などバラエティーに富んでいることがわかりました。
母に調理済みの食材や簡単に食べられる冷凍食品を薦めてみると「美味しくなかったらもったいない」と。私は「食べてみないと美味しいかどうかわからないこと」や「ちゃんと昼食を食べないとフレイル状態になるよ」と伝えました。
3.購入商品を宅配サービスがあるスーパーを利用
生協の宅配は便利でも自分の目で確かめてから購入したい、好きなものを選ぶ楽しさがあるのでスーパーは欠かせない存在です。
ただ、根菜類など野菜は重く持ち歩くのが大変なので、購入品を宅配してくれるサービスのあるスーパーを利用することをすすめています。
4.コンビニの惣菜をメニューに組み合わせる
近年、コンビニではお惣菜メニューを取り揃えているところが増えてきました。
お惣菜の容量は1人分としてはちょうどよく、和食惣菜のメニューも充実してきています。
その理由として、コンビニが人口が減りつづける若者よりも、増加傾向にありニーズの強い高齢(単身)者へと、ターゲットを変更した可能性があるといわれています。
これからコンビニには和食惣菜の新製品が並ぶことが期待できるでしょう。
カップに入ったおでん(1人用)や少量の惣菜をメニューに取り入れると調理負担をグッとかるくなります。
6.まとめ
親世代は、買ってきた惣菜をそのまま食卓に並べるのは主婦失格といった手作り信仰が強く残っています。
手作りは、作り慣れたメニューの気安さや慣れ親しんだ味で安らぎを覚える良さがあります。しかし、自己流の食事では低栄養、低体重につながりフレイル状態につながる恐れも。
子どもが一歩引いた目で親の食生活をチェックし、改善点をアドバイスすることで親子のコミュニケーションアップとフレイル予防につながれば一石二鳥ではないでしょうか。