野澤千絵著「老いる家 崩れる街」から空き家が増え続ける理由とは?

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1.野澤千絵著「老いる家 崩れる街」を読むきっかけ

80代の両親は、40年ほど前に建てた家で暮らしています。

今のところ二人とも元気でいてくれていますが、いずれ私が2人を看取った後

両親が住んでいる家の処分をひとりっ子の私がすることになります。

 

将来両親の家に買い手がつかないまま固定資産税を払い続けるいわゆる

負の不動産になってしまうのではないだろうか。

 

そんな理由から、私は空き家に無関心ではいられないのです。

少子化が加速し、空き家が増えるのは明らかなのになぜ新築物件が

建て続けられているのか?

私が抱いているこの疑問をわかりやすく書かれているのが

野澤千絵著「老いる家 崩れる街」です。

 

2.空き家は増え続けている

本題に入る前に、空き家はどれくらいのスピードで増え続けているのでしょうか?

総務省の住宅・土地統計のデータによると、総住宅数は6063万戸で

5年前と比べると304万戸の増加で平成10年からのたった15年間で

1000万戸以上のハイスピードで増加しています。

 

空家については、820万個の増加で5年前に比べて63万戸の増加で、

成25年には13.5%にまで増えています。

 

総務省「平成25年住宅・土地統計調査(確報集計)」の結果から

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野村総合研究所によると

20年後(2033年)には約2150万戸、空き家率は30.2%になると

予想されていて3戸に1戸が空家になるというデータを出しています。

 

国は高度成長期や景気が悪くなると住宅取得減税などの対策で

国民にどんどん住宅取得を勧めた結果、親もその子どもも

マイホームを持つようになりました。

その結果、親が亡くなった後の自宅が空き家とるにも関わらず

国は具体的な政策をとらなまま問題となっています。

 

一方で、本来なら農地や田畑には規制があって、宅地として家を建てられない

田畑は宅地化されて、広い畑の中にひと区画だけ戸建てやアパートが立ち並び

明らかに、計画的に造成され宅地化されたものとは違う光景を目にします。

 

また、東京の湾岸エリアや横浜市で高層マンションの建築が進んでいます。

人口減少の中、高層マンションが林立すること、新築住宅が作り続けられる

そのワケは何なのか?

 

著書の第1章~第4章の中で

第1章の大都市での高層マンションがなぜ林立するのか

新築住宅が作り続けられるカラクリについて

簡単にご紹介します。

 

3.高層マンションが林立するわけ

まず、東京湾岸エリアが超高層マンションが林立しているのか?

私の住んでいる横浜も超高層マンションが建設中の物件を目にします。

 

なぜなのか?

それは、国と自治体が特別に都市計画規制を大幅に緩和しているからなのです。

なぜ規制を緩和してまで高層マンションを建設する必要があるのでしょう?

理由は都市居住の推進や市街地の再開発が必要だとされているからです。

 

1980年代のバブル期の地価の高騰でサラリーマンが郊外に

住むようになり、人口が減少したこと。

 

都心に住むことを推めるために整備使用にも土地が細分化されていて

有効活用できないという問題あったのです。

 

バブル崩壊以降小泉政権では景気や不況対策に都市計画や建築の規制を

緩和したことで、湾岸エリアなどの工場跡地に高層マンションが

林立することになったのです。

 

一方で高層マンションにより子どもの数が増えたことで

小学校の教室の数が不足していること。

 

また、調査や共同施設の設備費用などの名目で地方自治体だけでなく

国も補助金を出しているのです。

 

著者は、市街地の再開発自体は悪いと言っているのではなく

地下が高くて整備が難しいオープンスペースや保育園・高齢者福祉施設などを

充実させることで市街地の環境の改善を奨めていいます。

 

4.新築住宅がつくり続けられるカラクリ

以前住んでいた社宅の裏手は、以前は田んぼで夏には

蛙の大合唱が聞こえたものです。

 

ところが、その農地は市街化調整区域であったにもかかわらず

宅地造成され、新築一戸建ての物件が建ち並ぶようになったのです。

 

土地計画法の中に私たちが宅地として住む地域を「市街化区域」とし

農地などを「市街化調整区域」と分けています。

市街化調整区域は、原則として農家以外の市民が

新しく住む住宅の開発は認められていません。

 

なぜ農地が宅地造成されて家を建てることが許されるのでしょうか?

2000年の都市計画法改正によって開発許可権限のある

自治体が規制の緩和の条例を定めれば、市街化調整区域でも

宅地開発が可能とされたのです。

 

川越市もこの改正によって2006年頃から農地が宅地化され

戸建てやアパートが増え続けました。

 

川越市は、不動産業界や農地所有者から規制緩和の強い要望があったこと。

農地エリアの不動産価格がやすいため不動産業者が売りやすく儲かること。

人口増加や地域が活性化すること。

などから市街化調整区域での開発が活発になったのです。

 

しかし、市街化区域には都市計画税という税金がかかりますが

市街化調整区域には課税されないことから

市民から不公平だとの声も有り2011年9月末には、新市長のもと

過度な規制緩和の廃止をしています。

 

川越市だけではなく、規制緩和の条例を定めて新築住宅を立てられるように

している自治体が多いのです。

 

そこには、自治体が人口を増やしたいという人口至上主義や

農地所有者や不動産建設業者からの組織票の力で当選した議員は

この人たちの声を無視できないという背景もあるようです。

 

5.まとめ

野澤千絵著「老いる家 崩れる街」の第1章について

私が興味のある部分をご紹介してみました。

 

第2章~第4章では、住宅の「老い」や都市計画や住宅政策についての

問題点なども明らかに。

そしては最後に著者からの7つの方策なども提案しています。

 

特に第3章「住宅の立地を誘導できない都市計画・住宅政策」では

わが国は地震国であるにもかかわらず、活断層の上であっても

住宅の新築を「禁止」できないというのは非常に興味深かったです。

 

国が本腰を入れて対策を打たないとどうなるのか。

個人レベルではどうしたらいいのか?を

考えさせられる良書だと思います。

 

これからマイホームを持つ予定の世代や空き家が予想される

物件を持っている人には一読をお勧めいたします。

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