ひきこもりの息子を救う父をリアルに表現 林真理子著「小説8050」

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1.林真理子著「小説8050」

著者の林真理子氏は1982年「ルンルン買っておうちに帰ろう」がベストセラーとなり1996には「最終便に間に合えば」「京都まで」で直木賞を、1998年には「みんなの秘密」で吉川英治文学賞を受賞。

また、格差社会を描いた「下流の宴」などベストセラー作家として有名です。

2021年4月発行の「小説8050」は、著者が20年以上前から気になっていたひきこもりについていつか書いてみたいとの思いが時を経て実現したという。

表題の8050とは、80代の親が50代の無職でひきこもりの子どもを養っている状態のことをいい、8050問題ともいわれ近年社会問題化してきています。

特に中高年のひきこもりが多く、40~64歳までのひきこもり状態の人は、内閣府の発表によると全国に61万人ともいわれています。

2.あらすじ

「小説8050」のあらすじについてざっくりとご紹介します。

【あらすじ】

都内の商店街で祖父から続く歯科医院を開業している大澤正樹と美しくて従順な妻節子、早稲田大学を出て一流企業に勤める長女由依(ゆい)と絵にかいたエリート一家だが、人には言えない悩みを抱えている。

それは、中学2年から7年間自宅にひきこもっている長男の翔太の存在だ。

ひきこもりの7年間は、正樹、節子夫婦は自立のための塾、カウンセラー、相談所などに手を尽くしたが解決しないままに時間だけが過ぎっていった。

しかし、あることがきかっかけで翔太がなぜ7年もの間ひきこもりを続けてきた理由を正樹、節子夫婦は知ることになる。

そして、父正樹と翔太の親子はひきこもりを続けてきた理由の真相と解決に向けて立ち向かっていく。

ただ解決への道のりの過程には、父と子の葛藤、正樹と節子夫婦の亀裂、姉の由依(ゆい)の結婚が立ちはだかり容易にはたどり着きません。

そこへ第三者の登場します。この第三者は父と子を支え伴走しながら解決へと導いてくれる父と子にとって救世主といえる存在となっていきます。

以上があらすじでした。

小説の中では父正樹は50代で長男の翔太は21歳の設定ですから、8050問題とは直接的に重なる部分はありませんが、8050問題の当事者なる前に

ひきこもりの息子を立ち直らせることに一家は立ち向かっていきますが、一方では妻が長年抱いてきた夫への不満やひきこもりの弟によって我慢させられた姉の不満が噴出するなどエリート一家の陰の危うさも丁寧に描かれています。

ひきこもりの息子が8050問題の渦中の人となる前に、立ち直らせたい父と母の切なる思いと行動でひきこもりからの脱出を試みた小説だといえます。

3.60代主婦からの「小説8050」の感想

主人公の翔太の父大澤正樹は50代で息子の翔太が21歳なので、60代の私からするとひと世代下の設定。

ただ、ひきこもりは決して他人事ではなく、子を持つ親ならいつ8050問題の当事者になるかもしれない。そんな思いから父正樹は次はどのような行動を起こすのか物語の展開に最後まで目が離せませんでした。

ひきこもりという親子の断絶状態から、信頼関係を取り戻すまでの時間が相当必要であること。

そして、親は「ひきこもりから子どもを救うんだ」という強い信念で立ち向かうことの大切さを学ぶことができました。

特に私の涙が止まらなかったのは女性記者と正樹の会話です。

女性記者が

「今、全国の不登校に悩んでいる多くの親御さんに伝えたいことはありませんか」

この問に父の正樹は

「子どもを信じて、お前を守ってやれるのは世界中でお父さんとお母さんなんだよと言い続けてください。」

ひきこもりから救われた翔太が父正樹へ言った言葉。

「お父さん、ありがとう」

息子を引きこもりから救う父に姿がリアルに描写され、感動と学びを与えてくれる

林真理子著「小説8050」の一読をおススメします。

また、精神科の医師として長くひきこもりについて研究をしてきた斎藤環先生の「中高年ひきこもり」は、ひきこもりの実態と世間の誤解を解く名著です。

8050問題について厚生労働省では「ひきこもり支援推進事業」のひとつに「ひきこもり地域支援センター」を全国に設置しています。

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